内装工事に坪単価は当てはまらない?「坪○万円」で判断できない理由
菊池総建株式会社のブログをご覧いただきありがとうございます。
当社は池袋・東京エリアを中心に、
全国で「内装工事一式」「原状回復工事」「改修工事」を手掛けています。

内装工事の費用を調べていると、
「店舗の内装工事は坪○万円」
「オフィスなら坪○~○万円」
といった「坪単価」を目にすることがあります。
例えば、ネットで「内装工事は坪30万円程度」という情報を見て、
「20坪なら600万円くらい」といった形で、おおよその工事予算を考える方法です。
実際、当社でも内装工事のお問い合わせをいただく中で、
坪単価をもとにあらかじめ予算を想定されているケースがあります。
坪単価は計算しやすく、物件探しや事業計画の初期段階で、大まかな予算感をつかむための目安としては分かりやすい指標です。
しかし、実際に物件の状況や希望する工事内容を確認していくと、
坪単価から想定した予算と、実際に必要となる工事費に差が生じることがあります。
なぜ、このような差が出るのでしょうか。
一つは、内装工事の内容が床面積だけでは決まらないためです。
同じ20坪でも、オフィスと飲食店では必要な工事が異なります。
さらに同じ業種・同じ坪数でも、スケルトンなのか居抜きなのか、既存の内装や設備をどこまで利用できるのかによって、必要な工事は変わります。
そしてもう一つ注意したいのが、ネットなどで紹介されている「坪〇万円」という数字に、何の工事費が含まれているのかが統一されていないことです。
つまり、
「坪30万円×20坪=600万円」という計算自体が間違っているのではなく、
その坪30万円がどのような条件で算出された数字なのかを確認する必要があります。
今回は、内装工事の坪単価とはどのような数字なのか、
そしてなぜ「坪○万円」だけでは実際の工事費を判断できないのか、施工業者の視点から解説します。
内装工事の「坪単価」とは?

坪単価とは、対象となる工事費を床面積(坪)で割った金額です。
1坪は約3.3㎡。
例えば、20坪の物件で対象となる工事費が1,000万円だった場合、
1,000万円 ÷ 20坪 = 50万円/坪
となります。
計算自体はとてもシンプルです。
ただし、内装工事で注意したいのは、「1,000万円の中に何が含まれているのか」という点です。
今回、内装会社やオフィス会社などが公開している情報を調査しましたが、民間のテナント内装工事について、
設計費や設備工事、什器などをどこまで坪単価に含めるかを定めた、共通の算出ルールは確認できませんでした。
つまり、
坪単価 = 対象となる工事費 ÷ 坪数
ではあるものの、「対象となる工事費」の範囲が必ずしも同じではないのです。
ネットで見る「坪○万円」はなぜこんなに違う?
ネットで内装工事の費用を調べると、「坪○万円~」といった情報が数多く見つかります。
しかし、実際に公開されている坪単価を調べてみると、同じ業種の内装工事でも金額にはかなり幅があります。
例えば、
飲食店のスケルトン物件について、
マネーフォワードでは20坪の場合、坪40~70万円、総額800~1,400万円程度を目安として紹介しています。
一方、テナント工房では、スケルトンの飲食店について坪40~80万円程度を目安としています。
※参考(2026年8月31日確認)
マネーフォワード「店舗の内装工事費用はいくら?」
テナント工房「飲食店の内装費用はいくら?」
飲食店だけでなく、オフィス内装についても公開されている坪単価には差があります。
例えば、
- 床・壁・天井・間仕切りなどを中心に坪10~30万円
- C工事を中心としたフルリニューアルで坪40~90万円
といった目安が紹介されています。
数字だけを見ると、「坪10万円と坪90万円では、あまりにも違う」と感じるかもしれません。
しかし、それぞれの内容を確認すると、坪単価として想定している工事範囲が同じではありません。
坪10~30万円としている例では、床・壁・天井・間仕切りなどを中心とし、
電気・電話・LAN、家具、空調・水回りなどは別の費用として説明されています。
一方、坪40~90万円としている例では主にC工事を対象としており、B工事や家具などは別途とされています。
店舗についても同様で、設計費まで含めている坪単価もあれば、厨房機器や什器などを除いているケースがあります。
つまり、同じ「内装工事の坪単価」でも、何を含んだ金額なのかという前提が違うのです。
そのため、
「A社は坪30万円、B社は坪50万円だから、A社の方が安い」
とは単純には判断できません。
ネットで坪単価を参考にするときは、金額だけを比較するのではなく、
「その坪単価には何が含まれているのか」まで確認することが重要です。
同じ20坪でも工事費は同じにならない

もう一つ重要なのが、同じ坪数でも工事内容は同じではないということです。
例えば、すべて20坪の物件だったとしても、
A:既存内装を多く利用するオフィス
B:スケルトンからつくる物販店
C:スケルトンからつくる飲食店
では、必要になる工事が大きく異なります。
オフィスで既存の床・天井・照明・空調・間仕切りなどを利用できれば、新しく施工する範囲を抑えられる可能性があります。
物販店をスケルトンからつくる場合は、
床・壁・天井、間仕切り、電気・照明、建具、造作、サインなど、さまざまな工事が必要です。
さらに飲食店になると、基本的な内装工事に加えて、
厨房、給排水、給湯、ガス、電気容量、空調、換気・排気ダクトなどの設備工事が大きく関わります。
つまり、坪数は同じ20坪でも、その20坪の中に「何をつくるのか」が違うのです。
「20坪」という数字だけでは工事数量も分からない
実際の見積もりでは、床面積だけを見て工事費を決めているわけではありません。
例えば20坪のオフィスでも、
- ほとんど間仕切りのないワンルーム
- 会議室や個室、倉庫などを細かくつくるオフィス
では、必要な材料や施工数量が変わります。
間仕切りが増えれば、LGSや石こうボード、クロス、巾木などが増えます。
扉やガラスが必要になることもあるでしょう。
さらに部屋を分けることで、照明・スイッチ・コンセント・空調・消防設備などの調整が必要になる場合もあります。
床面積が20坪だからといって、壁の長さや建具の枚数、設備の台数まで同じになるわけではありません。
施工業者が実際に見積もりを作成するときは、
「20坪だから○万円」
ではなく、
「この物件に、何を・どの仕様で・どれだけ施工するのか」
を確認し、それぞれの工事を積み上げていきます。
居抜きなら坪単価は安くなる?
内装工事費を考えるうえでは、物件の現況も重要です。
一般的には、スケルトンからすべて新設するよりも、居抜き物件で既存の内装や設備を利用できる方が工事範囲を抑えやすくなります。
しかし、
「居抜き=必ず安い」
というわけでもありません。
例えば、既存のエアコンが残っていても、新しい店舗に必要な能力を満たしていなければ交換が必要になる可能性があります。
厨房設備や給排水設備についても、レイアウトが合わなかったり、劣化していて使用できなかったりすれば、撤去や新設が必要です。
そのため、施工業者側では、
「何が残っているか」
だけではなく、
「実際に使えるのか」「新しい用途に必要な能力を満たしているのか」
まで確認する必要があります。
小さい店舗ほど坪単価が高くなることもある
坪単価を見る際は、物件の広さにも注意が必要です。
「10坪なら、30坪の3分の1くらいの工事費になるのでは?」
と考えるかもしれません。
しかし、内装工事では、すべての費用が床面積に比例して増減するわけではありません。
例えば、10坪の店舗でも30坪の店舗でも、
必要に応じてトイレや分電盤、エアコン、出入口、給排水設備などを設けます。
また、養生や搬入搬出、現場管理などにかかる費用も、
面積が3分の1になったからといって、必ずしも3分の1になるわけではありません。
そのため、小規模な店舗では総工事費は小さくても、1坪あたりに割り戻すと坪単価が高くなることがあります。
実際に、店舗設計施工.comが公開している関東圏の飲食店(スケルトン)の
参考価格を1坪あたりに換算すると、次のようになります。
- 10坪:約75~122.5万円/坪
- 20坪:約58.5~104.5万円/坪
- 30坪:約49~90万円/坪
この例では、10坪・20坪・30坪と規模が大きくなるにつれて、1坪あたりの金額は低くなっています。
もちろん、これはあくまで同サイトが公開している条件に基づく参考価格であり、
すべての内装工事に当てはまるものではありません。
ただ、「面積が小さくなれば、工事費も坪単価も同じ割合で安くなるわけではない」
ということを考えるうえでは、分かりやすい例といえるでしょう。
※上記の坪単価は、店舗設計施工.comが掲載している関東圏の飲食店(スケルトン)の工事費目安を坪数で割って算出しています。
参考:(2026年8月31日確認)
店舗設計施工.com「飲食店の内装工事費用相場と成功のポイント【2026年最新版】」
内装工事費は「坪数」ではなく工事内容を積み上げて考える

施工業者が見積もりを作成する際には、坪数以外にも多くの項目を確認します。
例えば、
- 現在の物件の状態
- 図面・レイアウト
- 床・壁・天井の施工範囲
- 間仕切りの位置や数量
- 使用する仕上げ材
- 建具の数量
- 電気容量や必要な回路
- 空調・換気設備
- 給排水設備
- 消防設備
- 既存設備を利用できるか
- A工事・B工事・C工事の区分
- 搬入搬出や養生
- 工事可能な曜日・時間
などです。
床は㎡、巾木はm、建具は枚数、設備機器は台数というように、実際の施工数量を確認して見積もりを行います。
だからこそ、内装工事では床面積だけから最終的な工事費を算出することが難しいのです。
では、内装工事に坪単価は当てはまらない?
ここまで読むと、
「それなら坪単価は参考にならないのでは?」
と思うかもしれません。
坪単価そのものが意味のない数字というわけではありません。
例えば物件を探している段階で、
「この規模の店舗をつくるなら、内装工事にどの程度の予算を考えておく必要があるのか」
と、大まかな予算感をつかむためには参考になります。
同じ業種・同程度の物件状態・同程度の仕様・同じような工事範囲であれば、
物件や施工事例を比較する指標としても使いやすくなります。
一方で、
「坪30万円×20坪=600万円だから、600万円ですべて完成する」
と考えるのは注意が必要です。
その坪30万円に電気・空調・給排水・厨房設備・什器・設計費などが含まれていなければ、実際に必要な予算は変わります。
坪単価は、
「予算感を見る数字」であって、「見積金額を決める数字」ではない
と考えると分かりやすいでしょう。
まとめ|「坪○万円」を見るときは工事範囲も確認しよう
内装工事の坪単価は、大まかな工事予算を考えるための目安として利用できます。
ただし、ネット上で紹介されている「坪○万円」は、すべて同じ条件で算出された数字ではありません。
会社や資料によって、内装仕上げだけなのか、電気・空調・給排水などの設備まで含むのか、設計費や什器まで含むのかが異なります。
さらに、実際の工事費は、
物件の状態・業種・工事範囲・施工数量・仕様・設備・施工条件
などによって変わります。
そのため、内装工事を検討するときは「坪単価はいくらか」だけでなく、
その坪単価には何が含まれているのかまで確認することが重要です。
施工業者の立場から見ると、坪単価は工事費を決めるための単価というより、
工事費を床面積で割った「結果の数字」に近いものです。
最終的な工事費を知るためには、図面や希望する工事内容、設備条件などを整理し、
必要に応じて現地調査を行ったうえで見積もりを取ることをおすすめします。
小規模な壁1面の補修からご相談OKです。


